先日、不動産投資の説明会に行ってきました。
ちなみに私は、不動産投資についてはずぶの素人。投資と言っても、普段は株や投資信託をちまちま買っている程度です。

「不動産投資」というある程度人気の投資がある、というのは知っていましたが、「怪しそう」「ゴリゴリに営業されそう」と思ってこれまで聞いてきませんでした。そんな中、ふと機会があったので行ってきたのです。
聞いてきた「不動産投資」の概要
あくまで、私が話を聞いてきた不動産投資についての概要です。これ以外にも、いろいろな形があるんだと思います。
とある不動産会社(上場企業です)の場合です。
とりあえず、聞いてきたお話をそのまま箇条書き。
- 都内(もしくは横浜・大阪等の都心部)で単身者向けマンションの1室を購入する
- 2.000万台くらいの中古物件
- 頭金は10万くらいで、フルローン35年を組んで買う
- そして、不動産仲介会社を通して誰かに貸す
- 毎月家賃が入ってくるが、その代わりにローンや仲介手数料、管理費や修繕積立金の出費がある
- 毎年、固定資産税等の出費もある
- 毎月の収支はほぼとんとん
- 借りていた人が転居して空室になったり、修繕積立金が値上がりしたりするリスクがあるので、それらを考慮すると毎月の出費は平均すると1-2万円になる
- 35年のローンを払い終われば、そこからは家賃が不労所得になる
- つまり、老後の備えになる
ということでした。
老後2,000万円問題等と言われている昨今、確かに老後の不安は大きいです。
月に1-2万円の出費なら現実的なラインですが、それでどれだけ老後の備えができるのか…気になります。
軽くシミュレーションしてもらった(毎月の収支)
夫の年齢は33歳なので、33歳からスタートするとしてシミュレーションを作ってもらいました。
33歳から35年ローンを組んで、2080万円の物件を購入します。フルローン、変動利率ですが、仮に35年ずーっと1.92%とします。
家賃は、仮に毎月85,000円とします。
●収入
家賃 85,000円
●支出
ローン返済 68,000円
家賃回収手数料 1,100円
建物管理費 9,100円
修繕積立金 4,800円
支出合計 83,000円
● 合計 月間収支 +2,000円
という感じで、これだけなら毎月トントンです。家賃85,000円がずーーっと妥当かどうかとか、利率は変わるだろうとか、そういう不確定要素はいったん省きます。
ですが、年間で考えると追加で固定資産税の支払があります。
年間の収支シミュレーション
●収入
年間収入 上記の×12 24,000円
●支出
固定資産税 60,000円
●年間収支 ▲36,000円
こうなり、これを35年間ローン完済まで継続すると、35年間で126万円のマイナスになります。
更に空室のリスクをある程度見込むため、3年に1回、2ヶ月空室になるとすると、35年間で12回空室になり、1度の空室で8.5万円×2ヶ月=17万円の収入がなくなるので、17万円×12回で204万円の収入が減ります。
また、本来なら空室になれば部屋のクリーニング費用がかかりますし、新規の借主が決まれば礼金収入があるかと思いますが、これは両方相殺してないものと考えます。
そうすると、35年間でのマイナス額は合計126+204=330万円、年間約9.4万円、月に直すと約8千円の支出が必要になります。
確かにこれなら、毎月の出費は1-2万円程度と言えそうです。
35年後、ローン完済したらどうなるか
毎月のローン返済68,000円がなくなるので、これがまるまる収入になります。
現在33歳の夫が35年後とすると、68歳です。そこから80歳くらいまで12年間生きるとして、月に68,000円×12ヶ月×12年、合計で約980万円の収入に…ならないですね。
前述と同じ「3年に1回2か月」空室になるとすると、12年で4回8ヶ月空室になるので、家賃85,000×8=約100万円を差し引いて、12年間の収入は約880万円。月額にして6万円頂けることになります。
また、80歳になる頃に売却すると仮定し、更に1,300万円の価格がついたとします。
いったん単純に、これを12年間の収入880万円に足して(880+1,300)、2,180万円の収入が得られるとします。
契約初期手数料がかかる
ここまでを纏めると、まずローン返済中の35年間で330万円のマイナスがあります。
その後、12年間家賃収入を頂いて880万円、更に物件を1,300万円で売却すると収支は合計で1,850万円になります。
あとまだ計算していないのが、契約初期の手数料です。
・手付金 10万円
・ローン契約諸費用 約50万円
合計 60万円 が必要になるので、これを差し引きして、この投資全体の収入は1,790万円になります。
税金も考えてみる
しかし、忘れてはならない存在が「税金」です。
ついでなので、ざっくりと税金も考えてみることにします。
まずはローン支払中の35年間
マンションの税金について考えます。まずはローン支払い中の35年間です。
●収入 月額85,000円 に対して、
●費用
・利息 約20,000円(平均してならした場合)
・減価償却費 中古物件なので耐用年数をローンと同じ仮に35年として、土地25%建物75% 定額法とすると、
2,080万円×75%=1,560万円 /35=44万円(月額3.7万円)。になります。
(設備はもっと耐用年数が短いですが、便宜上35年で平均化するために、この35年間は毎月3.7万円を償却するとします。
月額37,000円
・家賃回収手数料 1,100円
・建物管理費 9,100円
・固定資産税 5,000円(年額60,000円)
合計 72,200円
●所得
85,000円-72,200円で月額+12,800円なので、年額にすると約15万円です。(空室の月があった年はその分収入が減ります)
これが、現在の給与収入に追加されて課税対象になります。税額は給与額によりますが…0というわけにはいかなそうです。既に給与が多くて最高税率になっている社長や役員の場合は、税率は約50%なので、年額で8万円の税金を払う必要があります。
仮に今サラリーマンで年収が額面500万円なら、所得税も住民税も収入から20%ずつ控除された金額に対して10%ずつかかるので、15万円×80%×20%(所得税と住民税合わせて20%)=2.4万円(年額)の税金がかかります。
それにしても、収支で考えると毎月トントンなのに、税金計算のために所得を考えるとプラスなんですよね…ローンの返済は費用にならないので仕方ないのですが、釈然としません。
次に、ローン完済後、家賃を収入として受け取る12年間
次に、家賃収入として受け取りたい12年間の税金を考えます。
(月額)
●家賃収入 85,000円
●費用
家賃回収手数料 1,100円
建物管理費 9,100円
固定資産税 5,000円(年額60,000円)
合計 15,200円
●所得
85,000円-15,200円=69,800円
年間にすると約84万円になります。
この頃は年金生活を送っている前提ですが、年金の所得と不動産所得は別物として考えますので、不動産所得が年間103万円を超えなければ税金は無い…かと思います。(後日もっとちゃんと調べよう)
最後に、売却時の税金
33歳で物件を取得して、35年のローンを完済して68歳。その後12年間、80歳まで家賃収入を受け取った後で物件を売却したとします。
物件は2,080万円で購入し、1,300万円で売却できたと仮定します。これだけ見ると値下がりしているようですが、この物件は保持している間に全額の減価償却が終わっているので、価値は0になっています。
そうすると、売却価格1,300万円-購入時の諸費用50万円-売却時の諸費用(仮に)30万円=1,220万円 が売却利益となり、税金の対象となります。
売却益に関わる税金は、譲渡所得税・住民税・復興特別税を全部足して20.315%なので(この記事を書いている現在)、約248万円です。
他に、印紙税で数万円必要なので、約250万円の税金がかかるといえます。
全ての収支を合計してみる
まず、上記で計算してきたものを纏めます。
収支のまとめ
●契約時
手付金とローンの諸費用で合計60万円の支出
●ローン返済中の35年
・税金を考えない支出が35年間で合計330万円。
・更に税金が年間2.4万円(サラリーマンの年収が額面500万円とした場合)×35年間で84万円。
ですが、空室が2か月続くと利益が0になって税金もかからないので、空室が出た年(3年に1回)は税金がありません。
そうすると、35年間のうち12年間は税金がかからないので、税金がかかるのは実質23年間。税金は2.4万円×23=約55万円です。
なので、合計で385万円
●その後の家賃収入を得る12年間
収入880万円。税金はかからない想定。
●最終的に売却したタイミング
売却金額1,300万円-売却手数料30万円-売却益250万円=1,020万円の収入
合算してみる
(支出)
契約時の支出60万円+ローン返済中の支出385万円=445万円
(収入)
家賃収入880万円+売却時1,020万円=1,900万円
(合算して)
総収支 1,455万円 (約1,500万円!)
になりました!
総収支1,500万円をどう考えるか
いろいろと計算してみた結果、数字の上では、お話を聞いた不動産投資を行うと1,455万円(約1,500万円)のプラスになりました。
しかし、当然ですが、これからローンを35年払い、その後12年間家賃収入を得、さらに売却することを考えると、その間には様々なことが起こる可能性があります。
(考えられる嫌な可能性)
- 家賃収入が下がった!
- 借主が付かず、空室の期間が予定より長い
- 事故物件になってしまった
- ローンの利息が大幅に上がった
- 管理費や修繕積立金が大きく値上がりした
- 予定していた価格で売却できなかった
もちろん、良いことが起こる可能性もあります
(考えられる良い可能性)
- 家賃収入が上がった
- 予定より空室期間が短く、更新料等の予定してない収入もあった
- 予定していたより高く売却できた
- ローン返済中に思いがけず夫が死んでしまった
(団信に加入するため、死亡するとローンの残債が免除されます。そうすると、その後は家賃収入を残された家族の生活費として使うことができます)
でもこればっかりは、何が起こるか分かりません。
良い方に転ぶかもしれないし、悪い方に転ぶかもしれません。
家賃が下がったり借主が付かない可能性をできるだけ排除するために、人口の多い都心の、借主が多い単身者向けマンションを提案頂いたのだと理解しています。
更に、売却価格が大きく値下がりすることを防ぐために、新築ではなく中古物件を紹介するとも言われました。
あとは、私や夫が、この投資に対して前向きになれるかどうかです。
さて我が家はどうするか
結論から言うと、お見送りしようと考えています。
理由は、約2,000万円、35年のローンを背負うのはリスクが大きいと判断したためです。
35年後に12年間の家賃収入を得て売却する、合計47年の話です。その時ももちろん東京は大きな街であるでしょうが、シミュレーションに用いた通りの家賃収入が見込めるか、売却益が見込めるかというと不透明感が強すぎると考えました。
現在、自宅マンションを35年ローン組んでおいて何を言う、という感じですが、自宅マンションは投資マンションとは考え方が全く違うんですよね…
更に、それだけの大きなリスクを背負って得られる収入が約1,500万円、というのも、「あれ思ったより少ないな」と思いました。もちろん、これだけのまとまったお金を老後に向けて備えようと思ったら、貯金なり投資なり大変だというのは理解しています。
けれど、例えば最後の20年間、家賃が1万円下がるとそれだけで収入が240万円下がります。修繕積立金がずっと5,000円ですが、やはり最後の20年間、倍の1万円になると更に収入が120万円下がります。
その上で売却価格が数百万円下がれば、あっという間に最終的に手元に残るのは数百万円…ということになります。
もちろん、それでも手元に残ればありがたいのですが、もっと悪いケースになると、ローン返済中にいつまでも空室期間が続いて、子供たちの学費やらの支出が立て込む時期に、月に何万円も支出が継続してしまうことも考えられます。想定よりも「良いこと」が起こるよりも、こういった「悪いこと」が起きる可能性の方がずっと高いような気がするのです。
そういうわけで、我が家の場合、不動産投資はお見送りすると決めました。
ただ、どういった中古マンションをお勧めされるのか立地や間取りに興味があることと、上記で計算した税金の支出について初回の面談では何も説明されなかったことが気にかかり、もう一度だけ面談しようと思っています。
税金の支出が一切書かれていないシミュレーションを頂いたので、最終的に手元に残る金額が2倍以上多く書かれていましたよ…(笑)
まあ、どれだけ熱心に営業されようと、最終的に一切何もサイン押印せずにきっぱりお断りすれば済む話です。ちなみに初回の面談は、怖くもなんともない20代後半のハキハキしたお姉さんが1人で対応してくれましたし。
というわけで、不動産投資についてマジメに考えてみた、というお話でした。